第参者(魅闇美)

自鳴琴のLibretto 第T幕 プレリュード(序曲)

昔々あるところに子宝に恵まれない王様が住んでいました。
王様はいつまで経っても生まれない世継ぎのことを思い、毎晩胸を痛めていました。
王様は毎夜、月に願うのです。
「神よ・・・いや魔法使いだろうが悪魔だろうが誰でもよい。
わしの願いをきいておくれ、世継ぎをこの腕に抱かせておくれ。」
組まれた指に力を込めて王様は嘆きの言葉を連ね続けました。
けれど、月はそんな王様を嘲笑うかのようにただその姿を見つめるだけでした。

嘆き悲しむ王様に宮廷内の人々は労わりの気持ちを込めて贈り物を届けました。
日に日に増える贈り物の山、それは途絶えることを知らぬかのようでした。
いつまでたっても生まれぬ世継ぎ、増え続ける贈り物の数々。
贈り物の数と王様の嘆きは比例して延長線が延び続けるばかり・・・
その線は王様が床につくまで延び続けるのだろうか?
憂い嘆く慨嘆の日々に身も心も疲れ果て、王様はいつしか塞ぎこむようになってしまいました。

そんなある日の事、いつものように王様が贈り物を贈りに来た貴婦人と
アフタヌーンティーブレイクをお楽しみになっていた麗らかな午後、
微風にのって奏でられる優しい旋律を耳にしました。
その旋律を聴いていると、なぜか切ない気持ちや安心感に包まれるような暖かさを感じます。
懐かしい旋律はいつだったか自分が幼い頃に母が歌ってくれたララバイ(子守唄)に似ていました。

王様はその歌の正体を突き止めるために歌声を追いました。
音源に近づく程その歌は明確な形を魅せます。
高く繊細な音色、空間に響く柔らかな旋律。
それを追い求め歩き続けた王様はやっとのことで音の漏れている部屋に辿り着きました。
細くドアを開けて室内を覗き見ます。けれど中には置き場に困った贈り物の山だけで、誰もいません。
しかし依然として優しい旋律は流れ続けているのです。
王様は恐る恐る部屋の中へ入り、耳を欹てました。
すると音は贈り物の山の中から聞こえてくるではありませんか。
驚いた王様は急いで近くにいた使用人や臣下を呼んで贈り物のリボンを全て解くように命じました。

そうして出てきた音の正体は可憐な少女のアンティークドールでした。
王様はその人形をそっと抱き上げると、
長い睫が開いて冬の夜空のように深い濃紺の瞳と視線が絡み合いました。
手の平に当たった小さな背中に不釣合いなサイズの螺旋。
それを巻いてやるとさっきの旋律が流れ出します。
少女の人形を見ると軽く開けられた唇から音色が奏でられているようでした。
愛らしい風貌と優しい音色に心を奪われた王様は、
その人形にシャルロットという名前をつけて蝶よ華よと可愛がりました。

・・・To be continue

あとがき
読んで下さりありがとうございます!オルゴールって自鳴琴ともいうらしいです。
それ知ったらつかいたくなってこうなりました(笑)
ちなみにlibrettoはイタリア語で小さな本や歌劇脚本という意味があります!
シャルロットの名前の由来は洋菓子です!
話中途半端でT幕終了なんて・・・本当に序曲だ。わ〜スペースないのでこの辺でさようならっ

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