東雲

冬桜

音もなく落ち、音もなく溶けてゆく

花を掴むため手を伸ばそうと

すり抜け、溶けて、風に失せ

虚を掴んだ掌だけが

永久に捕らえられないと知っている

静寂を渡る淡き花が

ヒトに魅せるのは幾許の梦か

柔らかな白き花弁に此の身を埋めて

冬がつくる冷たい春の幻に

我らはただただ惑うのみ

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