南阜

お茶の時間、in the terrace

 ―――――――今日も、彼女のティータイムは始まる。
 薔薇園が美しく咲く庭が見える、テラスで彼女は座っていた。
「……インデンス」

彼女は燕尾服を着た執事わたしの名前を呼んだ。

「なんでございましょう、お嬢様」
私は優しく微笑んだ。
「紅茶が飲みたいわ、淹れてくださるかしら」
「かしこまりました」
私は、紅茶の準備をし始めた。
 ケーキや、マカロンと一緒に私は彼女の待つ、テラスに向かった。
「お嬢様、本日の紅茶は、アールグレイでございます…」
「嫌!」
私は唖然とした。
「は?」
「アッサムが飲みたいわ」
―――――――全く、我が儘なお嬢様だ……
「申し訳ございませんでした」
 私はにこりと微笑んだ。
私はテーブルの上のアールグレイのカップを持ちあげた。
「いけません」
彼女がぼそっと呟く。
「……貴方がアールグレイを飲むのよ、わたくしは、アッサム。
お分かりになったのなら、早くなさい、インデンス」
命令口調で彼女は私に言った。
私はくすっと笑い、一礼をした。
「お待たせいたしました、お嬢様」
私はテーブルにアッサムのカップを置くと、
彼女の目の前に座った。
「……インデンス」
「なんでしょう?」
「……美味しいわ、」
「勿体ないお言葉……」
彼女は微笑んで私の顔を見た。
「貴方の淹れる紅茶はとても、優しい味がするわ」
 彼女は紅茶を愛しげに見つめていた。
 ―――――――いつまでも、彼女のティータイムは続いていく。

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