かねて

信託こそが愚行だった

長く続く階段を降り終えると、頑丈そうな扉が現れる。
銃弾を弾き返せるであろう分厚い鉄の扉を開くと、そこには何人もの軍服をきた少年がいる。
「こんなに・・・」
「今の日本は、降参の白旗を振っても何の意味もない。 敵国は日本の土地を欲しがっているわけでもない。 まして、こんな雀の涙ほどの資源を欲しているわけでもない。 この戦争の目的は、虐殺。ただそれだけだ。 日本人がいなくなるまで、この戦争は終わらない」
「どうして、日本人を?」
「いや、正しく言えば、対象は日本人だけではない。 できるだけ多くの人間を殺せれば、それでいい」
今、世界では食糧難が続いている。それと同時に、紫外線による皮膚病も。 その対策として、ユーラシア大陸に作られた地下施設。 その施設は、短時間で作られたために、全世界の人々を収容することは不可能だ。 各国に作ろうにも地盤の違いによって不可能な国がある。
その代表が、日本だったのだ。
「人口が多く、地下施設の作れない国が標的にされる」
人間が地上に住むことができなくなるまで、推測するに、残り五年。
それまでに、日本人は全滅するかもしれない。
「わかったかい?今の日本は、どう足掻こうとも、戦争を避けられない。 そして、軍人は親のない子供を利用し、敵国の兵を殺させる。 国民が、少しでも長く生きていたいのであれば、そうするしかない。 だから、君たちには此処で軍人に育ってもらうしかない。」
―日本に未来は既になかったということか
「さあ、頑張って。
君の今の名は捨てることになる。 これからは、番号で呼ばれる筈だ。僕の時と同じであれば。」
「あなたの番号は?」
「十七。今は、国から名前をもらって、広野 優。君の名は?一応聞いておくよ。」
赫 恭耶(てらし きょうや)
「では、恭耶くん。君が生きて、ここから出てこられることを望むよ」
その言葉を置いて、去って言った。
生きて出られる?

恭耶はこれから、ここで起きることを何も想像できぬまま、奥の部屋から来た白衣の男に案内される。


「名は、忘れるんだ。一人一人覚えているときりが無いから、ここでは数字で呼ばれることになる。 君は、七十九。丁度さっき、七十九が亡くなったのでね。君は、丈夫そうだから、期待しているよ」
「ここで、何を?」
不安そうな面持ちで、何度もそれを尋ねて、やっと聞き出せたのは、
「強化訓練。それだけだ」




その言葉だけだった。




その男もまた悲痛な表情で。


彼はまだ気付かない

彼らは本当の意味で、子供を、国を、守っているのだと

ここに上げるにあたって一部修正しました。

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