かねて

信託こそが愚行だった

軍場【いくさば】
この時代の日本は、 かつての日本に並ぶほど悲惨な状態で、 恐らく、残された道は、 崩壊の世界だけで、 「死んだ魚の目」 そこらに倒れた人間は正にそんな目をして、 これからの世界を見据え、 己の生に終止符が打たれることを、 ただ望んでいたのかもしれない。


彼方(かなた)、血塊。
此方(こなた)、亡骸。
傍らにあるものはもう、
かつての形もわからずに、
否、
物であったか
者であったのかさえもわからぬ。
辺りに響くは、
子の泣き声。
女の悲鳴。
次々に、有意義に殺されていくその(いのち)は、
何処いづこ
いづこ。


戦車の轟音に、その様はかき消されて。

空は血の如く朱く、夕暮れの朱に染まっている。

鳥は飛ぶ事をやめ、血の海を泳いだ。

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