魅闇美

ドア

あんなに出たくてたまらなかったこの場所から、こうもあっさりと出られるとは思ってもみなかった。

閉じ込められたわけじゃないし、出ようと思えば出られた。
それでも出ていけば後戻りできないって解っていたから、割と平和な現状が変化するのを恐れて出られなかった。後から解ったことだけど、問題は環境にあったんじゃなくて心にあったんだって。閉じ込めて鍵をかけてたのは自分の心だって。あの頃の私はそんなことに気づかないで、環境のせいにしては悲劇のプリンセスを気取って王子様の助けばかりを夢見てた。
王子様、というか王子様のような誰か。
「可哀相なお譲さん、僕がここから連れ出して差し上げましょう」なんて、そんなセリフをはいて現れる人が現実にいたらそれは変人だろうけどね。漫画の読みすぎだって解ってる、夢の見すぎだとかそんなの手遅れ。しょうがないでしょ、私はそういう物語とか妄想するのが大好きなんだから。
世間的に言うオタクとは一緒にされたくないけど、一般人よりはそっちの方に近いことは自覚してる。アニメとか漫画とかから学ぶことだって多いのに、私の周りにいる大人にはよき理解者がいない。
理解するどころか嫌悪している感じかも。
別に理解してくれなくてもいいし、嫌悪するくらいならほっといてくれればいい。なのにパソコン画面を覗いたり、こたつで漫画読んでたら小言呟くし。
だから私は部屋に引き籠った。放っておいて欲しかったんだもん。
そうしたらオタク=引き籠りの勝手な固定概念からまた何か言ってくるし。ちなみにオタク=引き籠り=ニートだって、異議ありっ!オタクの中にも漫画が好きとかアニメ専門とかコスプレが趣味とか色んな人がいるっていうのに、何にも知らないでひとくくりにして気持ち悪い意味分かんないのレッテルを張らないで欲しい。
説明しないで理解してくれなんて無茶な話なんだから話せばよかったのだろうか。嫌悪丸出しの人相手に詳しく話すほどの勇気なんて私は持ち合わせてないから結局できなかったと思うけど。

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