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獄華蓮

コミカルな策略家は笑う

「さて心ちゃんに問題です。今日は何の日でしょうか。ヒントはとーっても生徒会役員が忙しい日だよ」
そう、生徒会室のソファーの上で正座をしている彼女に声をかけたのは現在の高等部の生徒会長である望月司だった。ニコニコした表情の裏側には、腹黒い面々を持っていることを彼女は重々承知していた。
「やだなー司くん。そのぐらい余裕ですよ、今日は入学式ですねー。とっても生徒会の忙しい……」
「そうだね心! 今日はとーっても忙しい入学式の日だね。なのにあれだけサボるなと言ったのにサボった大馬鹿野郎がいるんだ。さて心に問題です。それは誰でしょう、 少し難しいかな?」
司は少し軽薄に言っているように聞こえるかもしれないが、内心かなり怒っているだろうと彼女は思った。しかしそれには気付いていないことにして、自分も軽薄な態度で返してみたが、その言葉は司の言葉に寄り最後まで発せられることはなかった。最後の方の司の声が、怒気しか感じられなくなり、流石の彼女も冷や汗をかき始めていた。
「わ、私? なんちゃってー」
「ふふ、正解だよ、心。わざわざ笑えない冗談にしなくていいのに」
司はそう笑いながら言ったが、目は笑っていなかった。つい彼女は「ひぃ」と素っ頓狂な声をあげてしまった。それがまた司の勘に触ってしまったようで、「心、何か言った?」と言われた時、彼女は懸命に首を振った。その後司がはにかみ、会長専用の椅子に座り直したところで彼女の肩が震えた。
「心、あれだけサボるなって言ったのに、どうしてサボったの? 俺はそんなことをする心の神経構造が知りたいな」
ニコリと笑ってはいるけれど、目は全く笑っていなかった。内容も、全く笑えない。例えるなら、そう、魔王の笑み。
「ひ、人助けやってました。やっぱり新入生はまだ高等部のことよく知らないじゃないですか……。だから、屋上に迷い込んだ少年を保護していましたっ」
嘘は駄目、そうよく理解している彼女だからこその言い訳。きっとここで屋上でサボったってことを遠回しにでも言わなければ、後々恐ろしいことになる、と彼女の直感が言ったようだ。
「へぇ、なんて言う子を保護したの?」
「あ、えと、貝地拓海くん」
「貝地くん? 中等部元生徒会長の?」
コクンと頭を縦に下ろせば、司の怒りも多少和らいだのか、彼女の表情に少しだけ精気が戻った。司は椅子の背もたれに体重をかけ、目を細めて何か考え事を始めた。しかしそれはほんの数秒の話で、すぐにまた、顔に笑みを戻した。
「まぁ、今回は貝地くんに免じて多めに見てあげる。けど、勿論ペナルティはあるからね?」
「こ、心得ております……」
そう発した司に到底勝てる訳もなければ逆らえる訳もなく、彼女は素直に肯定の意思を司に見せた。すると司も満足したようで魔王とはかけ離れた、先ほどの笑みとはかけ離れた、男とは思えないほどの可愛らしい笑顔を見せた。安心した彼女は力が抜け、ぐにゃりと正座を解いて、ソファーに寝転がった。

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