南阜

四月@部活見学

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「それにしても、今年の1年生、大人しそうだよねー」
奏多は少しがっかりしたように言った。
「なんで? べつに良いじゃん、大人しくても」
凛は首を傾げながら言った。
「甘い! 甘いよ! 凛! 大人しいってことは! スカートを短くする女子が居ない…ってことだよ? それは俺にとっては一大事なことであって…」
奏多は凛に向かって力説し始めた。
凛は「ふむふむ」と頷いて真剣に聞いていた。
修は「そんな女たらしの話を聞くんじゃありません。」と凛の耳を塞いだ。
「女たらしだと! 俺がいつ、女の子といちゃついてたってんだ?」
奏多は修にいちゃもんをつけた。
「…見たことねぇ…ふっ」
修は馬鹿にしたようにわざとらしく笑った。

「なにをぅ! 俺だって彼女の一人や二人…! 居たこともねぇええ!」
奏多はわざとらしく手で顔を覆い、泣きまねをした。
修はまた、わざとらしく「ふっ」と笑った。
「優志めぇえええ!」
奏多のいら立ちの矛先はなぜか優志に向かった。
「何でだよ! そこ普通修だろ! つーか、男四人が、集まるなんて滅多にねェだろ! 彼女とか居ない限り!」
優志は飛びかかってくる奏多をペイっと手で払った。
「ひどっ…」
修は小声で、さらに蔑んだ目で言った。
「おまえのせいだろ!」
優志は修のほうをキッと見た。
「まぁまぁ、落ち着いて〜」
凛は優志をなだめた。
「奏多は部活入ってるんだし、ちょっとは女子とは話してんじゃねーの?」
修は奏多に訊いた。
「まぁね! 吹奏楽部は女子多いしな! 可愛い子ばっかだよ!」
奏多は嬉しそうに言った。
「あ、そういや、奏多、吹部だっけ?」
優志は奏多に訊いた。
「そうだよ! 忘れてもらっちゃ困るなぁ〜」
奏多は楽しそうに言った。
「で、凛は軽音楽部、だよな?」
優志は確認するように言った。
「そーだよ! 優志は生徒会執行部でしょ?」
凛は笑って言った。
「うん。で、修は」
優志は頷いて、修のほうを向いた。
「帰宅部ですけど?」
修は薄目で優志をみながら言った。
「…え? 修って、帰宅部だったの?!」
奏多はものすごく驚いた。
「ふはっ! あれ、知らなかったの?」
凛は奏多の驚いた様子をみて、笑いながら言った。
「いや、だって放課後、凛と帰ってるじゃん!」
「まぁ、俺の軽音部は半帰宅部だから」
凛は面白そうに笑って言った。
「そうだったんだ〜、知らなかった〜」
奏多は「ほぉ〜」と言いながら納得した。
「俺はゲームするのに忙しいの」
修は手を横に振りながら言った。
「そうだ、修、おまえ」
優志はなにかを思いついたようだ。

「部活入れ」

「…はァ?」
修は思わず間抜けた声を出した。
「何言ってんの? 頭に蛆湧いた?」
修は呆れたように言った。
「わ、湧いたとかいうな! おまえ、部活入ってないから協調性とかその他モロモロが足りないんだ! だから絶対、部活、入ったほうがいい!」
優志は「うんうん」と言い聞かせ頷いた。
「じゃ、放課後、部活見学行くぞ!」
優志は修に指をさしながら言った。
「えー俺は行きたくな」「楽しそうだから俺も行くー」
修が言いかけたとき、奏多はびっと手を上げて言った。
「じゃー俺も行こーっと!」
凛も楽しそうに手を上げて言った。
「…ったく」
修は深いため息をつきながら言った。
「じゃー決定〜!」
奏多は誰よりも嬉しそうに言った。

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