南阜

四月@部活見学

/16:09-体育館前
優志は「まずは運動部からだな」と言って修の手を引いた。
「え、ちょっと、なんで」
修は抵抗するように立ち止まっていたが、優志の力には勝てなかった。
/16:10-体育館
「え? 見学? いいよ〜、なんなら、試合に参加してみる?」
男子バスケ部で優志と奏多と同じクラスの佐藤は快くOKしてくれた。
「ありがとう、佐藤くん!」
優志はペコっと頭を下げた。

ピーッ/試合開始
靴の擦れる音がする。
バタバタと男子生徒は体育館を走り回る。
その男子生徒の中にのんきに修は歩いていた。
「コラー! 修! 真面目にやれ!」
優志は修に叫んだ。修は優志のほうをみて嫌そうな顔をした。
「は、腹立つ! あの顔…!」
優志は少しキレた。
「まぁまぁ…。修! 頑張れ!」
凛は楽しそうに笑って言った。凛の言葉が聞こえたのか、修は凛のほうを向いた。
修と目が合った凛はふにゃっと笑った。
凛の笑顔をみたのか、修は顔を軽く綻ばせた。
「鈴木くん!」
佐藤くんは修にボールをパスした。
優志はどうせ受け取らないだろうと呆れていた。
「……」
修は何も言わず、ボールをキャッチした。
「おぉ!」
奏多は感心したような声をあげた。
修はゴールのほうをみた。
男子バスケ部の生徒は「鈴木くん! パス!」と言っているのにもかかわらず、修は思い切り無視をしてボールをゴールへ放った。

ガコンッ
「あ」
修は自分でボールを放っておいて驚いた。シュートが入った。
相当な距離が空いていて、フリースローの距離よりも遠いくらいだ。
「…すげぇ」
優志は唖然としてあいた口がふさがらない。

ピーッ/試合終了後
「わー! さすが修〜!」
凛は嬉しそうに飛び跳ねて言った。修は凛達の集まるほうに歩いて行った。
「…ひゃ〜凄いなー」
奏多はにこにこと笑って言った。
「おまえ! 真面目にやったら出来るんじゃねーか! いつも体育とか、真面目にやってないのに!」
優志は修の方を掴みガクガクと揺らす。
「いや、だって面倒くさいじゃん…」
修はガクガク揺らされながら言った。
「どんだけ面倒くさがりなんだよ!」
奏多はつい突っ込みを入れた。
「格好良かったよ〜! 修!」
凛はへにゃっと笑いながら言った。
「ありがと」
修は凛のほうを向いて軽く笑った。
「よし! 次だ!」
優志はグイッと修の腕を引く。
修は「ちょっと…もういいでしょ、帰りたい」と言うが、優志は無視をして、修の腕を引いた。
「ハイハイ、諦めて次行くよー」
奏多も止める仕草は見せず、修の背中をポンポンと押した。

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