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ロマンキコウ

短編詩集「誰も傷つけないマスタード・ボム」

「ワンダーランドと鉄の街」

鉄の街から
さびたピンホールでのぞいてみると
見えた 見えた 見えた
霧の中のワンダーランド

ニコチンの霧の向こうにあるのは
かつての居場所 ワンダーランド
水彩画で見た通りの極彩色
雲の綿飴で 海は空の色で
戦闘機の代わりに朱鷺が飛んでいた

霧を創っているのは鉄の街 エントツの煙
雨が降るという気配が常に降り
時折 夕立が私を濡らした
汚れた歯車を洗い流すためではなく
私の周りの世界をにじませるために
それはあった

霧の間を降ってワンダーランドから
すすけた桃色の蒸気機関車がやってきた
その煙突から出る煙は
進むたびに煤だらけになっていく
燃料は見たことがない 知らない
知りたくもない

次の街へ行こうにも
片道切符はここにはない
もっと錆びれば手に入るらしい
そのときには拳の中の切符に腕を引かれて
否応なしに連れて行かれる
それだけは分かっている

汽笛が遠くなっていく ドップラー効果
蒸気機関車が暗闇へと消えていく
その命運は知ることができない 知りたい
そっと手を振る

鉄の街から
錆びたピンホールで
いつもと同じようにのぞいてみると
見えた 見えた 見えた
遠く向こうのワンダーランド
霧の中のワンダーランド
陰っていくワンダーランド

それでも忘れたくないワンダーランド
見失いたくないワンダーランド
極彩色のワンダーランド

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