梔子いろは

「行きはよいよい、帰りは…」

《五ノ話・軍神勇(いくさがみ ゆう)》

 いけない、このままではタコ殴り決定だ。
今朝うっかり寝坊してしまった僕が部屋の前に着いたのは、集合時間を一時間も過ぎたころだった。どうしよう、一二三さんや狂巳さん、巫女巫先輩や真赤さんも怒ってるだろうな。そう考えてゆっくりとドアノブに手をかける。何て謝ろう。打倒に「遅れてすいませんでした」が素直でちょうどいいだろう。そこでふと、あることに気付く。もう中で話が始まっているのだ。どういうことだ。僕らの《倶楽部》は参加者が全員来ないと始めてはいけないという規約がある。誰かが遅刻した場合、遅れて始めるか、集会そのものを延期することになっている。作られてから一度も破られていないルールだ。みんなが破るだなんて考えにくい。ならば、この異常事態は何なのか?
こっそり、ドアに耳を寄せ立ち聞きすることにした。中からは前にあげた四人のものではない声がする。しかし誰なのだろう。どこかで、聞いたことがあるような気がするのだが。そう考えて、はっとなった。今しゃべっている誰かは、僕の声で話しているのだ。僕の声で、僕の口調で、話しているのだ。しかも誰も事のおかしさに気付いていない。本当の僕はここにいるのに。もう一人の軍神勇がこの扉の向こうにいる。事実は奇妙で、不可解だ。
とうとう、僕はドアを開けることが出来なかった。怖かったのもある。だって、ドッペルゲンガ―を見たら死ぬって言われてるんだろう?僕はまだ死にたくないからね。見なかったこと、聞かなかったことにしてその場を後にした。集会はもう一人の僕に任せよう。彼の話を聞けないのは残念だが、あとからあの場にいた他のメンバーに聞けばいい。
「帰りにマックでも寄るか…。」
くるりと踵を返した僕の後ろを、もう一人の僕の笑い声が後から後から付いてきていた。





                   THE END

はろろーん!な後書きのお時間
 初めての方は始めまして。何度目かぶりの方はお久しぶりです。梔子と申します。
 さて、今回は夏らしくホラーな感じで攻めてみましたが、見事玉砕した感じです☆「何やのんこれ全然こわないわ!」などの苦情は受け付けませんよ!私の心がブレイクされちゃうかもですからね!ちょっとでも怖いと思ってくれた方はありがとうございます。頑張った甲斐があります。…締切一日前にほとんど書きあげましたからね、これ。(最低)
 それぞれのキャラクターの個性は強力にしてあります。まずロリ系担当・巫女巫先輩。大学四年なのに小三フェイスな幼め容姿をもつ本物の巫女さん。
続いてインテリ系担当・真赤くん。ファンクラブの人数は百人超えるとか超えないとかの超モテ男。ただし不思議系。
更に女王様担当・狂巳さん。スーパーロングストレートとその美貌で学内きってのモテ子さん。ただしいろんな意味で怖い。
ヤンキー担当・一二三くん。その眼力で相手は瞬殺だぜ☆な超強面クールガイ。ただし本当は優しい子(笑)
最後のチキン担当・軍神くんはまたの機会ということで。
まぁまたの機会があるのかなんて言ったらないのかも知れませんが、梔子は彼らを愛してますよ。どっかでまた出させてあげたいな。

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