そうしてドラマチックかはわからないが、
衝撃的な出会いを果たした私と梨麻(りお)はクラスの誰よりも仲良くなった。
それは一番最初に仲良くなったからではなく、私と梨麻の趣味が似ていたからだ。
入学式の日に出会わなくても私たちは遅かれ早かれ仲良くなっていたと思う。
出会いはそのきっかけを与えてくれただけにすぎない。
梨麻はよく自分の感じたことを詩にして、自分の近くにあるものに書き留めていた。
それはノートや教科書であったり時には自分の腕に書いていた。
私も詩を作ることや物語をつくることが好きだから、
よく二人で自作の文章を見せあったり共同で物語をつくったりした。
梨麻といると会話が途切れることはなかった。
話すだけで楽しくて、あっというまに時間が過ぎてしまう。
別れ際に二人で時間の早さについて語り合うことも度々であった。
「もう空真っ暗だ・・・。時間って早いね。」
いつもそうやって梨麻は残念そうに言う。
「そうだね。私まだ30分しか経ってないと思ったらその3倍だったなんてね。」
「・・・私麻美といるのやーめたっ」
変な感じだな〜と呟いていると黙っていた梨麻は急にそんなことを言い出した。
「へ・・・?」
いつも突拍子のないことを言うのだがこの時ばかりは驚いた。
「え、私なにか変なこといった?」
怒らせる言動があったのか自分の行動を思い起こしていると、梨麻はクスッと笑う。
「怒ってるんじゃないよ。」
「じゃあ・・・何で?」
「だって、麻美といると時間が過ぎるのがはやくて気づいたらおばあちゃんになってそうなんだもん。」
そう言った後に見せたのは砂糖菓子のようにふんわりとした笑顔だった。
梨麻は自称ポエマーである故に恥ずかしい台詞もうたを歌うように口にする。
その言葉は嬉しいのだが、戸惑うこともあった。
例えば彼女の言う「大好き」という言葉である。
初めて言われたのは6月の梨麻の誕生日であった。
私は1週間かけて梨麻のために物語を作り、誕生日当日にそれをプレゼントした。
渡した時に梨麻は驚きとも喜びともいえないような微妙な表情をしていた。
ただ大きな瞳をぱちくりさせて表紙を眺める。
「気に入らなかった?」
恐る恐る問うと梨麻は首を横に振ってにっこりと泣きながら笑っていた。
「麻美最高。麻美大好きっ。」
抱きついてきた梨麻の頭を撫でながら喜んでくれて良かった、と言う。
あの時梨麻が言ってくれた「大好き」の言葉は友達として好きだという意味だと思う。
けれど梨麻の「大好き」の言葉は元カレが言った「愛してる」よりも嬉しかった。