正松

短編詩集「バクの休日」

「竜騎兵」

ぼろ布を着た案山子のような出で立ちで
通り過ぎる空っ風に連れ去られたいと
願う負け犬

渡り流れながら踏み外した獣道への地図
失ってもいずれ脳裏に浮かぶだろう
辿り着けないとしても

いくら奪っても
満たされない者が居る

手に持つそれは飾りじゃないと解っていても
狙うモノが見つからない
疾走 滲む閃光
遠くに鉄の街が見えたとしても
荒野を駆け続ける竜騎兵
跳躍 貫けない雲

かすれる息の暖かさを黙認して憔悴した
何も望めないのなら 
通り過ぎる死神に連れ去られたいと
願う負け犬
いくら潤しても
渇かない喉が在る

手に持つそれは飾りじゃないと解っていても
狙うモノが見つからない
疾走 滲む閃光
遠くに鉄の街が見えたとしても
荒野を駆け続ける竜騎兵
焦燥 貫けない水

限界の果て 存在が消える前
ひとりの竜騎兵は
地平線に向け 引き金を引く
忘れかけていた銃声が
甦った

手に持つそれは飾りじゃないと解っている
狙うモノが見つからないとしても
疾走 滲む閃光
遠くに鉄の街が見えたとしても
荒野を駆け続ける竜騎兵
祈望 手付かずの運命

蹄の音と共に駆けろ 竜騎兵

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