正松

短編詩集「バクの休日」

「スノーマン」

ハロー ハロー
今年も冬が降りました
コンクリートのタイルも
積もり積もった綿雪の下で
のっそり冬眠しています

かなあみの向こうに
ぽう ぽう ふわ ふわ
ろうそくの灯りが見えました
誰が灯したのかは知りません
それでもそこに
静かに 静かに
アイスキャンドルは座ります

開けた広場を
きゃあ きゃあ らん らん
子どもたちの笑い声が満たします
誰が誰なのかはわかりません
それでもそこで
元気に 元気に
子供たちははしゃいでいます

とんがった家の屋根から
どさ どさ ぽさ ぽさ
雪とつららが落っこちてきました
誰が落としたのかは知りません
もしくは
誰が落としたものでもないのかもしれません
それでもそこに
鈍く 鈍く
落っこちた雪はかさなります

僕はスノーマン
いつか
とろ とろ ぱた ぱた
春の陽気に溶かされてしまうでしょう
それでもいいのです
諦めていると言われれば
「そうじゃない」と返せないかもしれません
でも 黒いツクリモノの眼の裏には
何千 何万という 暖かい想像と
抱えきれないほどのおもいでが広がっています
望んでいた世界が広がっています
それで僕は満足です
誰が何を言ったとしても
何を望むとしても
それで僕は満足です

僕はスノーマン
冬が溶けたとしても
夢の中で会いましょう

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