如月裕

詩集「夕景メテアロンド」

『空気』

時折、街など歩いていると
人ごみの中に埋もれていたりなどすると
すう、と心が
すう、と身体が
すう、と空気に溶けていくような気がするのだ

それは周りから消えていくということ
空気に話しかける者はいない
空気に耳を傾ける者はいない
空気を見ようとする者はいないのだから

それがとってもこわいのだ
いつか、存在そのものが消えてしまいそうで
それがとってもこわいのだ
必死にまったりした空気から出ようとしても
ずぶずぶと手が沈みゆくだけで
空気は出そうとしないのだ

そうして私は少しずつ 確実に
空気の中にうずもれていくのだ

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