魅闇美

呪縛の月光蝶《後編》

何か言いたげに口を開けたり閉じたりしていたが、暫くすると霜は俯いて無言になった。
暇になったので窓へ近寄り外を眺める。
相変わらず外は雪景色。
外の雪を見つめていると、霜が沈黙を破るように言葉を発す。
「なんで・・・そんなに優しくするの?」
声が明らかに震えていた。
「・・・さぁな。・・・俺はさ、一人っ子だから兄弟できたみたいで嬉しいのかもな。」
「兄弟って・・・僕は昆虫だよ?」
霜の控えめな笑い声が聞こえてる。
外を見ていて霜の顔が見えないが、たぶん無理な笑いではないと思う。
「いいじゃねぇか、そう思ったんだから。」
ポスッと背中に何かが当たった。
振り向くと霜が頭を寄せている。
「僕もこんなお兄ちゃん欲しかったな・・・くだらないことで喧嘩したよね、 ふざけあって笑いあって・・・・。もっと長く傍にいたかった。」
「・・・」
重たい感情が流れてきた。これ以上・・・聞きたくない。
「でも良かった。最後の最後にお兄さんに会えて・・・良かった。 だからね、これで俺の人生終わ「それ以上なにもいうなっっ!!」
霜の言葉を掻き消す。そして儚い存在を強くかき抱いた。
「・・・言わないでくれよ、最後なんて。」
目から透明な雫が零れ出た。
「・・・お兄さん泣いてるの?」
「なんで・・・。」
口から出てきた言葉。
なんでこんな季節に出会ってしまったのだろう。
何で君は俺の目の前に現れたんだろう。
何で君は昆虫で俺は人間なんだろう。
なんで涙が溢れてくるのだろう・・・なんで、なんで

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