魅闇美

春色天使

最初はただヘチマの観察でもしているかのように見ていた
それがいつからだろうか・・・目が離せなくなったのは
君の些細な変化にも気づいてしまう
ちょっとしたしぐさにときめいてしまう
これはヘチマに対する感情ではないな
そう理解した頃だろうか、この感情に恋という名前をつけたのは
けれど好きなんだとわかったところで自分は何もすることができなかった
やっとの思いで話しかけられたのは入学してから10ヶ月もたった日の事
別に俺は口下手とか無口ではなく、どちらかというと結構話すほうだ
そんな俺でも君と話した事がなかったのは、たぶん変に意識してしまってきたからだろう
何気なく挨拶をすることもできないなんて自分でも可笑しいと思う
これが恋による症状ならばそれはそれでいいのだけれど、これじゃあまるで障害ではないか
恋って難しい
数学の難題はすらすら解ける自分がこんなに苦戦するのだから
公式が探せない、定理が解らない、証明はできるのに答えなんて出ない
ヒントが欲しい・・・
参考書なんて無い、攻略本も無い、少女漫画(恋のバイブル)は見る勇気が無い
いつになったら恋の迷路から抜け出せる?

ホームルームになり、放課後に絢(+ゆかいな仲間達)と遊ぶことを考え口元が緩む自分と戦っていた。
担任の話なんて上の空で、気づけば絢をちらちらと眺める自分がいる。
セクハラと訴えられてもしょうがないよなと自分でも自覚はしている。
それなのに止められないのは好きな気持ちを止められないのと同じだ。
でもほどほどにはしようと努力している、気持ち悪く思われたら終わりだから。
「〜で放送局員は明日の入学式の音響整備があるから放課後残るように。」
今まで耳を傾けなかった担任の話がクリアに聞こえた。
それはなぜか、聞き覚えのある単語があったからだ。
放送局員―――・・・俺だ。

恋の神様がいるとしたら意地悪じゃねぇか?
悪戯とかいうレベルじゃなくてこれは虐めだよな?
いきなり恋の神様というのが頭の中に出てきたのは、誰かにあたりたかったからだ。
そうしたらこの場合、恋の神様は担任になってしまうけれど。

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