あの後どうやって教室に戻り、誰と話していたのか思い出せない。
気がつけば帰宅していて布団にもぐりこんでいた。
綺麗なお姉さんは好きですよ。
だけど絢が好きなんだ。何回も何回も繰り返した言葉。
それが揺るぎそうになっている今。
信じられない事態に戸惑い続ける自分。
気まぐれだ。
そう決着をつけ、これ以上何も考えたくなくて眠りに付いた。
良く眠ったせいか自然と目が覚め、頭はすっきりしていた。
いつもよりだいぶはやい朝。
たまには早く学校にいってみるかと、まだ7時ちょっとの時計を見てから家を出た。
学校に着いたのは七時四十六分。
校内は人も少なく、やけに静かだった。
だから教室も誰もいないだろうと思っていた。
そんな予想を裏切ったのは俺が今一番会いたくない人物。
「早いんだね。」
教室に入った瞬間口をあけて突っ立つ。効果音はぽかんという感じ。
窓の外を眺めていた人物がこちらを向く。
「変な顔。」
水無月千歳はくすくすと微笑む。
「なんで、水無月こそこんな早く・・・?!」
「ん〜・・・朝の匂い好きだから。あと、朝に見る桜もいいなって。」
視線をずらして窓を見ると、手の伸ばせる位置に桜の枝があった。
「綺麗だよね。桜は好きだよ。」
窓枠に舞い落ちた花弁を摘まんで、水無月は呟く。
そんな姿を見て俺は思い出した。
そうだ、始業式に出会った女の子・・・
「あれ・・・水無月だったんだ。」
「ん、やっと解ったの?忘れちゃったんだと思った。」
いきなり出てきた言葉が何のことか水無月は解っていたようだった。
「夕焼けで顔が良く見えなかったし、なんか態度とか違って・・・。」
自分でそう言って気づく、そういえばあの時と自己紹介のときの態度は別人というくらい違った。
「態度・・・?」
「いや、自己紹介のとき・・・最初のときとは違ったから。あと今も・・・。」
「・・・アンタといると気が楽っていうか。・・・なんでだろうね?」
ごまかすような笑い方。
俺といるとって・・・特別扱いみたいで嬉しくなってしまう。
いやいやいや俺は絢が好きなんだって!!
「昨日桜の下で話してて、アンタとなら仲良くしてやってもいいかなって思った。
うそをつけない性格なんだなって、アンタのそうゆうとこ好き。」
お願いだからそんなこといわないで欲しい。
そうゆう風に素直に好きとかいわれると困る。
水無月がもっと可愛くなければよかった
水無月がもっと酷い性格の奴ならよかった