如月裕

詩集「夕景メテアロンド」

『イト』

上から睨みつけるのは誰?
ああまるで僕を嘲笑うように
大切なものを守れなかったと
臆病者と声がする

ああ僕は死んだのかな?
何も見えない真っ暗闇
君が隣にいないから
きっと、

遅すぎたんだ それに気付くのが

見上げた黒の隙間から
垂れ下がる白い希望
君に続く最後の手段
容赦なくそれを手繰った

下から絡みつくのは誰?
ああまるで僕を巻き込むように
自分だけが助かる気かと
狡猾者と声がする

ああ僕は生きられるのかな?
少しずつ増す白い光
君の手が見えた気がした
きっと、

細すぎるんだ 君へと続く道は…

その時糸が無くなった
堕ちていく 僕の身体
まぶたに浮かぶ君の顔
どうして? 笑ってた…

ぷつんと切れて それでおしまい。

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