「雪溶けてきてぐちゃぐちゃだ〜」裕子は少しいやそうな顔をした。
春樹は「大丈夫?」と裕子の足元を心配した。
「あ、うん。大丈夫だよ。ありがとう」
裕子は優しく笑った。春樹の心は完全に、彼女に奪われていた。
「あ、あのさ」
春樹がピタリと止まり裕子を呼び止めた。
「ん?」
裕子はピタリと止まり、振り返って春樹の方を向いた。
「えっと…その…好きな人とか居るの?」
春樹が俯きながら訊いた。
「私は好きだよ」
裕子はにこりと笑って言った。
「はっ?」
春樹は目を見開いて驚いた。
「宮本のこと」
裕子は照れ臭そうににこりと笑った。
「…あ、えっと…あの…」
春樹は裕子が自分のことを好きだなんて信じられなくてつい俯いた。
「宮本は?」
裕子は首を傾げて訊いた。
「…いや、俺は…俺は…あ、の…その…」
春樹は少し間をあけて、
「好きだけど、下野のこと」
と呟いた。春樹は「へへっ」と嬉しそうに笑った。
「ほんと? よかった」
裕子も嬉しそうに笑った。
「俺らは空気、空気」
優は自分らに言い聞かせるように呟いた。
「そう、俺らは空気、ブププ…」
要は上がり切った口角を手で隠しながら言った。
「笑うな、耐えろ、要」
優も顔が笑っていたが、耐えるように言った。
「だって面白くて、ニヤニヤしちゃう」
要は肩を震わせ、笑いをこらえている。
要は小声で「いやァ、観察し甲斐があって楽しかったよ。お互い意識してるから、チラチラ見てんだもん。あー面白かったァ」と付け足して笑った。
春樹は「おまえ! 気付いてたのか!?」と訊いた。
「え? なんのこと?」
要は知らんぷりをした。要は先に歩いて行ったが、肩が震えているのを見ると、相当に笑いをこらえているようだ。春樹はそれに気が付いたのか、要の方へ駆けて行って、車にひかれた後の汚い雪をザッと蹴り思い切りかけた。
「ギャー! 雪かけんな! きたねえええええ!」
要はバッと飛び上がり雪を避けた。
春樹は「うるせぇえ!気付いてたんなら早く言えっ!」と怒りながらも嬉しそうだった。
宮本 春樹に起きた、春の奇跡。
―あとがきと言う名の懺悔―
えーと、どうも。南阜です。スーパー懺悔タイムがやってきました。
なんか、ノンフィクションもどきになってびっくりしました。
人間観察、最高!ひゃっほーい!とか言ってみる。はい、すみません。
なんか、疲れているみたいです。夜中のテンションって怖いです。
あぁ、無常。(今頭の中で出てきた。実際どういう意味か知らない。)
作品についてなんですが、卒業には全く触れていません。
卒業の「そ」の字もありません。ただ季節が卒業の季節なだけです。
ちなみに、ファンタジーか恋愛系で悩んで、現部長とじゃんけん(笑)して、恋愛ものにしたんですが、恋愛の「れ」の字もないことに書き終わった瞬間、気がつきました。
まぁ、いいじゃないか!思い出話に浸る男子生徒!素敵ですよね!
ここまで読んでくださって有り難う御座いました!