如月裕

ある詩集「Cross Word World」

『草原の少年』

少年は歩いている
まっさらなままで

命の波打つ草原を
ひたりと足で踏みしめながら
少年は歩く 歩き続ける
遠くで、ぞうが横を通りすぎた
太陽がやわらかく微笑んだ

さらさら流れる風は優しく
けれどどこか寂しくて

汚れを知らない少年は
抱いていた後悔さえ忘れ
夢みるように 歌うように歩く
歩き続ける
はっきりとした終わりはない
終わることはあっても

かばがのっそり頭を上げた
花の匂いがあたりをつつんだ
木の上でとらがあくびした
木の葉はさわさわ笑ってた

少年は旅をしている
まだ、まっさらなままで

いつかめざめる日を夢みて

http://bungeiclub.nomaki.jp/
design by {neut}