魅闇美

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教室に戻ると教室の隅で杏奈と瑞樹が楽しそうに話しているのが目についた。 瑞樹が杏奈の髪を指差して話していることから、たぶん昨日渡したシュシュの話 をしているんじゃないかと思った。あまり意識したことはなか ったが杏奈と瑞樹は結構仲が良かったりもする。杏奈の好きな奴は瑞樹なのだろ うか。仮に杏奈が瑞樹のことを好きなのだとしたら納得できる。瑞樹は面白い奴 だし友達思いでもある、背は低いが顔は整っている方だ。 惚れてもおかしくはないだろう。
俺が返ってきたことに気がついたのか瑞樹は杏奈との話を終わらせ俺の方に歩 み寄ってきた。
「今までどこいってたんだよ。貸したCDの話したくてうずうずしながら待ってたんだからな」
「瑞樹、杏奈と何話してたんだ?」
「遅れた理由とかなしにいきなりそれかよ。杏奈ちゃんのこと気になるんだ」
「どうだっていいだろ」
「素直になれよ。気になるから何話していたか知りたいんだろ?」
「別に…」
口ごもる俺を見て瑞樹は溜息を吐いた。
「お前そのままじゃダメだよ」
「あ?」
「…今日の放課後杏奈ちゃんと遊ぶことになった」
予想していたより2人の進展が早くて心がついていかなかった。ただ苛立ちが先に立つ。
「俺にそんなこと報告しなくていいだろう?」
「何話していたか聞きたがってたじゃん。それに知ってた方がいいかなって思って。 いつも杏奈ちゃんと帰ってるし」
「…もう一緒に登下校はしないよ」
「は?何でだよ」
「さっき杏奈にそう言ってきた。 あいつさ、好きな奴いるんだって…俺と一緒に登下校してたら好きな奴に誤解されるだろ」
杏奈に言ったのと同じ理由を瑞樹にも言う。 瑞樹はその言葉を聞いて驚いたように瞬きを繰り返した。
「優、杏奈ちゃんのこと何も解っていないんだな」
「…あ?」
杏奈のことを何も解っていない?俺は杏奈と小学生の頃から傍にいて、 知らないことはないくらいお互いのこと知っているはずなのに。
「お前が鈍いのも解るし、悪気があってそう言ったんじゃないって解るけどさ…」
「何が言いたいんだ?」
「杏奈ちゃんの為を思って一緒に登校するのやめようって思ったんだろ?」
「ああ」
「それってさ、友情?兄弟愛みたいなもの? …幼馴染だからってさ、それでいつも終わらせてたんじゃないか? 杏奈ちゃんのことを大切に思っているのは他の理由だったら?」
「他の理由?」
「杏奈ちゃんのことどう思ってる?」
さっきから自分を悩ませる問題が問われた。
「…んなの…わかんねぇの」
「逃げんなよ!はっきり答え出せよ」
「そんないきなり言われても」
「俺、結構杏奈ちゃん好みなんだからな。お前が好きじゃないなら容赦なく狙ってくから」
宣戦布告して瑞樹は席に戻って行った。 俺はと言うと白旗をあげて俺は関係ありませんって感じだ。 瑞樹も杏奈に好意があるというなら両思いだ。 二人を応援しようと邪魔ものは退散したのだがどうして邪魔ものを邪魔ものにさせるように誘導するのだろう。 俺が杏奈のことを好きなら困るのは二人ではないだろうか。 杏奈のことをどう思っているか、俺の本心はどうなのだろうか。

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