魅闇美

Like×Like

「お、珍しい。いちごミルクがあるぜ?」
子供のようにはしゃいで瑞樹は投入口に千円札を入れる。 そして背伸びをして一番上のボタンを押した。 いちごミルクが下から出てくるはずだったのだが出てきたのは黒の缶。
「え…」
手元に持ってくるとそれはコーヒーなのだと解る。
「な、ななんでだよ。この自動販売機壊れてんじゃないのか?」
「…お前がボタン間違えたんだろ」
見本の下にボタンがあるのに瑞樹は上のボタンを押していた、間抜けすぎる。
「お前自動販売機も使ったことないのか?」
「あるしっ!なんだこのしょうもないミステイクは…あ゛〜」
「アホだな」
「優も何か飲むのか?」
財布を出したのが見えたのか瑞樹は聞いていた。
「ああ」
いちごミルクのボタンを押して、出てきたいちごミルクを瑞樹に差し出す。
「コーヒーと交換」
「マジで?」
ぱあっと顔が明るくなって瑞樹は子犬のように微笑む。
「サンキュー、優愛してる!」
「気持ち悪いこと言うなよ」
嬉しそうにいちごミルクに頬ずりする瑞樹を見て思わず笑いが零れた。二人で 壁にもたれながら飲んでいると瑞樹はまだいちごミルクのことが嬉しいのか機嫌 よく話しだした。
「優は男前だよな。優しいし優しいし優しい」
「優しい以外言ってないぞ」
軽く突っ込みを入れつつ瑞樹の話を聞く。
「杏奈ちゃんも優のそういうところ好きだってさ」
「ふうん…」
「でもさ嫌いでもあったって、俺にも優しくしてくれるし優はみんなに優しいんだよな。 色んな人に嫉妬したって」
「…」
「昨日は杏奈ちゃんの相談に乗っていただけ。別にデートとかそんなんじゃないよ」
「そっか」
「安心?お前もそろそろ自分の気持ちはっきりさせ…」
「もう、自分の気持ち決まってる」
言いきる俺を見て瑞樹はにっこりと笑った。
「優は素直じゃないよな。俺は杏奈ちゃんのことどう思ってたかなんとなく解ってたぜ?」
「なんでだよ」
「like×like」
「すきすき?」
「好きのような、そんな感情杏奈ちゃんに持ってたんだろ?それってめっちゃ好きってことだったんだよ」
何度か頭の中で繰り返し何が言いたいのかやっと意味が解った。
「あてつけじゃないのか?」
「かもしれない。ほら、女子集まってきたぜ?」
逃げたのか話題を逸らされた。飲み切った缶をゴミ箱に捨て集まり始めたクラスの方へ向う。

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