南阜

そういうところが難しい。

彼の名前は暁晞 騏。
家の近所の満垣(みつがき)高校の1年生。バスケ部所属。
「寝癖ついてるよ」
舜亮はにこっと笑って寝癖に触れた。
「止めろっつの!」
騏は結構なシャイボーイである。

そんな彼の姿を見ていつも面白がってからかっているのが、友人の塚実(もりざね) 舜亮。明らかに、騏よりは成績が優秀で、学級代表を務めるほどの実力をもっている。

「ちょっと!騏君!遅いじゃないっっ!」
学校の玄関で待ちうけていたのは、眞鉈(まなた) 早季。
バスケ部のマネージャー。小柄で可愛い。

「悪いな!早季!」
騏は早季の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。

「早く着替えて、体育館行って!」
早季は顔を真っ赤にしながら言った。
「わかってるよ」
騏はにこっと笑った。

騏は、バスケ部の中では結構上手い方である。
たまに先輩より上手くて嫉妬されたりもする。
漫画でよくあるような、裏庭に呼ばれてリンチ的なことも日常茶飯事で、起きたりもする。
しかし、いつも喧嘩で勝つのは騏なのだが。

「遅れてすみませんした」
着替えを終えた騏は1つ上の先輩に一礼した。
「…暁晞…ま、まぁ、いいがな」
先輩は騏を避けるように言った。

「…やっぱり避けられてる(・・・・・・)よね、騏は」
横で舜亮はにやにやしてる。
「…俺なんかしたっけ?」
騏は首をかしげるように言った。

「さぁ?こないだの喧嘩で先輩惨敗だったからじゃない?」
舜亮はわざと聞こえるように言った。

「あぁ?なんだと!塚実!」
先輩はかっとなって、舜亮に殴りかかる。
それを舜亮は避け、先輩に足をかけ、転ばせた。


「止めてくださいよ、みっともない」
舜亮は蔑んだ目で転んだ先輩の顔を見た。

「…っ!」

「何やってるのよ!二人共!」
そこで早季がやってきて、二人を止めた。
「すみません、先輩っ!二人共、人をからかうのが好きなんです!許してあげてください」
早季は先輩に手を差しのべながら謝った。

「大丈夫だよ、早季ちゃん」
先輩はやせ我慢のような笑顔を浮かべた。

「つまんね、」
騏はため息をつきながら、ウォーミングアップを始めた。

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