南阜

そういうところが難しい。

――――――…1年五組

「櫻坂は兄弟とか、家族はいるのか?」
騏は友槻についてひたすら訊いていた。

「え、と…一人…優槻(・・)っていう兄がいるよ」

「ゆうき?同じなのか?」
舜亮は少し興味ありげに問うた。
「う、うん、発音が少し違うんだ」
友槻は頷きながら言った。

「凄いな、それ」

「兄は僕よりも、健康的で、活発なんだ」
友機は何か悔しそうな顔をした。
「…へぇ、そうなのか」
舜亮は何も言えなくなり黙り込んだ。


「…健康的とかはあんまり関係ないんじゃないか? つーか、人と比較しても何にもなんねぇじゃん?」

騏は少し恥ずかしそうに言った。

「そ、そうだよね、有り難う、暁晞くん」

友槻は嬉しそうに微笑んだ。


―――――…

「じゃぁな〜舜亮!」
騏は舜亮に手を振った。
「おー明日は朝練ないから遅刻しろよ!」
舜亮は手を振り返しながら毒を吐いた。
「何でだよ!」
騏は遠ざかりながらも突っ込みを入れた。


騏は一人になり、のそのそとゆっくり歩く。
騏の帰路には、商店街がある。

「あ、騏さん!こんばんは!」
騏が歩いていると、小さな女の子が話しかけてきた。

夕季(ゆき)ちゃん!こんばんは」
騏は女の子、もとい夕季の頭を撫でる。
夕季は早季の妹で、結華の同級生である。

「今日は私のお家、寄って行かないの?」
夕季は騏の服の袖をくいっと引っ張った。

「うん、ごめんな、夕季ちゃん。また今度、来るから」
騏は夕季の頭を優しく撫でた。

「わかった!また今度来てねっ」
夕季が嬉しそうに微笑んだのを見て、騏は「またね」と言って手を振った。

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