南阜

そういうところが難しい。

騏は舜亮と体育館で練習を始めた。

「今の、フォーム崩れてた」
舜亮は騏に向かって言った。
「最近調子悪いんだよね」
騏は体育館の地べたに座り込んだ。
「それは、恋してるから、かな?」
舜亮はからかい口調で騏に言った。
「…なに言ってんだ!んな訳ねーだろ」
騏は顔を真っ赤にしながら言った。
「そう?それじゃ、どうしたっていうのさ?」
舜亮は騏の顔を覗き込んだ。
「わかんねぇ…んだよっ!」
騏は座った状態でボールを放った。
そのボールは思いっきりリングの端に当たり、ころころと転がって、廊下のほうに行った。
「あ、やべ」
すると、廊下のほうから体育館を覗き込んでいる青年が居た。

「ボール取ってくれ!」

その青年はびくびくしながら、ボールを拾い上げた。
騏は青年のもとへ駆け寄った。

「っと、悪いな…って櫻坂(さくらざか)?」
騏はびくびくした青年の顔をじっとみた。

「…あ、お、おはよう、暁晞くんっ」
櫻坂と呼ばれた青年はぺこっと一礼した。


彼、櫻坂(さくらざか) 友槻(ゆうき)は騏と同じクラスで気弱で軟弱、病弱なため、学校を休みがちの青年である。

「今日は来れたんだ?」
そんな友槻を結構気にしている騏。

「あ、う、うん。今日はなんだか、調子が良くて…」
友槻はにこっと微笑みながら、騏にボールを渡した。

「そっか。よかったな」
騏は優しく微笑んだ。

「あれ〜?友槻じゃん!どうしたのさ、こんなとこで」
舜亮が友槻と騏のもとに駆け寄った。

「あ、塚実くんも…バスケ部だったんだ?」
友槻はきょとんとしながら、舜亮の顔をみた。

「優等生でもスポーツくらいはするよ?」
騏はにやにやして、舜亮のほうを見ながら言った。

「優等生ってなんだよ」
舜亮は少しむっとした。

「僕も…バスケ部に入りたかったなぁ…」
友槻はぽつりと呟いて、寂しそうな顔をした。

「…入ればいいじゃん」
騏はあっさりと言ってのけた。

「…え?」

友槻は目を大きくし、驚いた。
「そうだよ、今は1年生だし、今からでも遅くはない!」
舜亮はにこっと笑って言った。

「よろしく、櫻坂」
騏は少し照れながら、手を出した。

友槻は少し、はにかむように微笑んで騏の手と握手した。

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