南阜

そういうところが難しい。

―――――…放課後

ゆうきはHRが終わり、教室を後にした。
「…何処行く気だ?アイツ」
舜亮と騏はゆうきの後をつけていた。

「…裏庭…?」
舜亮は少し驚いていた。

「…しっ…あれ…」
騏は静かにするように促した。



「手紙で僕のことを呼んだのは、貴女?」
(うしお)は裏庭で彼、ゆうき(・・・)を待っていた。
「ゆ、友槻くん!そ、そうです」

潮は嬉し恥ずかしそうに微笑んだ。
「私、友槻くんのこと好きなんです!」

潮の言動にゆうきは重い口を開いた。
「…残念だけど、付き合うことはできないよ」

「どうして…っ」
潮はゆうきに問い詰めると、ゆうきはため息をついた。


「あんた、全然色気ないもん。 それにその髪型だって似合ってないし、顔だって…」
潮の表情に笑顔が消え、目には涙が溜まる。



「それはひどいんじゃねーの?櫻坂」
すると、渡り廊下の方から、騏が出てきた。

「あ…暁晞く…」
潮は騏の顔をみて、ぽろぽろと涙を流す。

「…(うしお)ちゃん大丈夫?」
騏はそっと潮の頬の涙を拭う。

「…暁晞 騏…だな?」
ゆうきはじっと騏の顔をみる。
「…おまえ、優槻(ゆうき)のほうだな?」
「そうだよ、俺は櫻坂 優槻(ゆうき)だ。そんなこと、どこで知った?」
ゆうき、もとい優槻はにやっと笑った。
「…友槻(ゆうき)に訊いた」
「チッ、あのお喋りめ」
優槻は舌打ちをした。

「…どうして、友槻と入れ替わりで来てる?」
騏は問うた。

「あ?入れ替わり?何言ってんだ?お前」
優槻は蔑んだ目で騏を見つめた。
「入れ替わりに学校来ているだろう!髪型まで一緒にして!」
騏は優槻を責め立てる。



「…く、くく、あはははは!」



優槻は冷笑した。

「何が可笑しいんだ!」
騏は少し後ずさった。


「くくっ…笑わせる!入れ替わりで学校に来ている…だと?
 なぁに、可笑しなこと言ってやがる?
俺らはゆうき(・・・)という名の人物のもうひとりのゆうき(・・・)
 つまりは櫻坂 ゆうきは、二重人格なんだよ!」
優槻は愉しそうに笑って言った。
「友槻自身は知らないけどな」

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