…六月…麻賀崎町
「いい加減起きなよっ!」
布団に入りこんでもぞもぞしている青年を揺さぶる女の子が居た。
「…嫌だ〜…後ちょっと…」
青年は寝起きが凄く悪そうだった。
「嫌だ≠カゃないよ!兄ちゃん、遅刻しちゃうじゃない!」
女の子は懸命に青年を起こそうとする。
「……遅刻なんて平気だしー」
青年は布団をかぶる。
「…もう!早くしてよ!
女の子は青年もとい、騏の名を呼んだ。
騏は嫌々布団から出た。
「…全く、朝からうるせぇな、結華は…小姑みたい」
騏はぷっと鼻で笑いながら言った。
「なんですって?お・兄・ち・ゃ・ん?」
女の子もとい、結華の後ろには般若が見えた気がした。
「…ごめんなさい、なんでもありません」
騏は何かを感じ取ったかのように言った。
ここは
父の転勤でしょっちゅういろんな街を渡り歩いて、最終的に
「騏!なにしてるの!
母は、階段をぱたぱたと駆け上がって、騏の部屋に入ってきた。
「え、マジで?やべぇっ!朝練!」
騏はかぶっていた布団をばさっと思い切り押し退け、階段を駆け降りた。
「わりぃ、わりぃ!舜亮!」
騏の友達の舜亮は優しく微笑む。
「早く行かないと鬼コーチに怒られるよ、騏が」
舜亮はにこっと笑い騏のほうをみる。
「な、なんで俺だけ?」
「俺はもう、少し遅れますって言ってある」
舜亮はにやりと笑って言った。
「はぁー?俺の分も言っとけや!」
騏は舜亮の肩に腕を回す。
「ほら、遅刻する!」
「やべぇ、そうだった!走るぞ!」
騏は舜亮の返事も聞かず走り出した。