南阜

そういうところが難しい。

騏は静まり返ることを知らない商店街の道を一人で歩いていた。
すると、見覚えのある後ろ姿が見えた。

しかし、いつもと何か様子が違う。
そいつの周りには何人もの知らない女性たちが群がっていた。
「やだぁ〜もう、ゆうきったら!」

そいつとは、紛れもない、ゆうき(・・・)の姿だった。
ゆうき(・・・)は女性の肩に腕をまわし、歩いていた。

「…櫻坂!」
騏は思わず呼びとめてしまった。

すると、ゆうき(・・・)は、振り返り止まった。

「あの子誰〜?」
すぐ傍にいた女性はゆうきに問うた。

「おまえ、こんなところで何してんだよ!」
騏が問うと、ゆうき(・・・)は冷酷な目で騏を睨んだ。

「…馴れ馴れしく話しかけんじゃねーよ」
ゆうき(・・・)は思い切り騏の身体を押し退け、人ごみの中に消えて行った。


「…さ、くら…ざか…だったのか?今の…」
騏はすべての思考が停止したかのように、その場に立ち尽くしていた。

―――…もしかして、アイツが…優槻…なのか?
   それしか思い当たらねぇ…
   だって、あの櫻坂 友槻は、…気弱さは…冗談じゃない…としたら、
   きっとそうだ…あいつが…。

櫻坂 優槻という青年と、櫻坂 友槻は、双子…ということになる。

騏はぐるぐると思考をめぐらせた答えが、それだった。

「あーっもう!帰ろ!」
騏は髪の毛をぐしゃぐしゃと掻き、早足で歩きだした。

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