騏は静まり返ることを知らない商店街の道を一人で歩いていた。
すると、見覚えのある後ろ姿が見えた。
しかし、いつもと何か様子が違う。
そいつの周りには何人もの知らない女性たちが群がっていた。
「やだぁ〜もう、ゆうきったら!」
そいつとは、紛れもない、
「…櫻坂!」
騏は思わず呼びとめてしまった。
すると、
「あの子誰〜?」
すぐ傍にいた女性はゆうきに問うた。
「おまえ、こんなところで何してんだよ!」
騏が問うと、
「…馴れ馴れしく話しかけんじゃねーよ」
「…さ、くら…ざか…だったのか?今の…」
騏はすべての思考が停止したかのように、その場に立ち尽くしていた。
―――…もしかして、アイツが…優槻…なのか?
それしか思い当たらねぇ…
だって、あの櫻坂 友槻は、…気弱さは…冗談じゃない…としたら、
きっとそうだ…あいつが…。
櫻坂 優槻という青年と、櫻坂 友槻は、双子…ということになる。
騏はぐるぐると思考をめぐらせた答えが、それだった。
「あーっもう!帰ろ!」
騏は髪の毛をぐしゃぐしゃと掻き、早足で歩きだした。