真崎珠亜

進め!セイトカインジャー!!

「……って、勝手に終わらせんなぁ!!」
と、叫んだのは勿論ツッコみ役のコタローである。
「誰がツッコみ役だ!」
……あ、こっちにも干渉するのね。
「…というか、何故俺が『タッちゃん』なんだ」
「『高藤』の『た』。じゃない?」
「あぁ…、成程」

*******

「……つーか何の話してたんだっけ」
「生徒会が悪と闘う秘密戦隊組織ではないかという話だ」
とことんマイペースで脳天気な会長にちょっとした頭痛を感じながら、高藤はそう答えた。そもそもその議題もどうかと思う。
「あ、そうそう。……つーかさぁ、『は』って何よコタローちゃん。夢と希望に溢れた回答だと思わないのか?」
「溢れすぎてて逆に何も言う気になりませんよ……」
疲れたように溜息を吐いて、きちんと座り直すコタロー。実際かなり疲れている。
「ていうかぁ、高校生にもなって秘密戦隊組織なんてありえなーい! 智人夢見すぎー」
 そう言ったのは会計長の海那かいな麗美れみ。三年。校内一の美女と噂される美貌を持つ彼女は、自分が可愛いのを十分理解し、利用して大量の男を泣かせてきた超悪女である。小悪魔なんて可愛いものではなく、天使の皮を被った魔王とでも呼べば良いだろう。因みに初木とは同じ中学で腐れ縁である。美しく艶やかなウエーブのかかったセミロングの黒髪とぱっちりと開いた円らで黒目がちな大きな瞳。あとは得意の『あまえる』攻撃で数々の偉業…もとい悪行を行ってきた。女にはとことん嫌われるタイプである。
「男はいつまでも夢を追い続けなくちゃいけねーんだよ」
「レミ分かんなぁ〜い」
「男のロマンじゃ、浪漫。女にゃ分からん」
「ふぅ〜ん、そういうモノなの? のぶやん」
「……知るか。それより仕事をしろ。手を休めるな」
 いつもの如く馬鹿話を始めた会長に見切りをつけ、そそくさと書類のデータをパソコンに打ち込む高藤。彼らが今やっている作業は新入生用の生徒資料の作成なのだ。
「うぇー…。だって打ち込みばっかでつまんねぇんだもん。それに提出期限明後日でしょ? なら息抜きしようや」
「常に息を抜いている奴が言うな」
「ってか何で○○長しか居ないわけ? 下っ端はどうしたんよ?」
 生徒会員は何も五人ではない、総数20名ほどは居るはずなのだが、忙しく働く今日に限って人がいない。
「…皆さん今流行りの風邪お休みだそうですよ」
 画面を見ながら静かにそう言ったのは二年生で書記長の小川おがわ佐保さほだ。腰まであるストレートで絹糸のような黒髪を持ち、見た目も中身も和服の似合う大和撫子な美少女だ。
「みんな揃って風邪かよー。ここまで来ると集団ボイコットみたいでなんか嫌だな」
「それより私もさっきから気になってたんだけどぉ、何でコタローちゃんここにいるの?」
「僕も生徒会役員ですよ!?」
「だってぇ、コタローちゃん議長さんだけど、議長長さんじゃないじゃない?」
 人差し指を頬に当てて可愛らしいポーズをした海那にそう言われて言葉に詰まるコタロー。そもそも○○長ではなくとも役員ならこの場にいて良いはずなのだが、何せ周りで働いているのが生徒会長、生徒会副会長、会計長、書記長なものだからつい疎外感を感じてしまう。

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