真崎珠亜

進め!セイトカインジャー!!

 某月某日某時刻。某県にある某高校内の生徒会室にて、生徒の代表とも言える役員長の五人が集まり、黙々と仕事をしている時だった。
「…なぁ、高藤君や」
 と、重々しく第七十五期生徒会長の初木智人ういきともひと君が口を開いた。智人君は黒髪の短髪で、顔立ちは高校三年生にしてはどこか少年の面影が強くてとっても好奇心の強そうなキラキラした目をしている男の子なんだぞ♪
「何だ?」
 高藤君と名指しで呼ばれた副会長の高藤信弥たかとうのぶや君は、見ている書類から顔も上げずに聞き返す。信弥君は焦げ茶色の髪にキリリとした端整な顔立ちをしている子で、銀縁フレームの眼鏡をしていて超クールなんだぞ★
「君は生徒会とは、何の為にあると思う?」
いきなりのアバウトな質問に高藤君は一瞬戸惑うが、目線は書類に向けられたままでその問いに答える。
「…生徒会とは我が校の生徒の代表組織として、生徒の意見を積極的に取り入れ、生徒や教員並びに来賓の方々により過ごしやすく、より良い環境作りや、風紀委員が無い替わりに素行の悪い生徒の取り締まり、また生徒の代表として一般生徒の手本となるたm」
「ばぁ――――――――――――――つっ!!」
「のあっ!?」
 途中で遮られるのと同時に新品の白チョークが投手のフォームをとった初木君の手からもの凄い勢いで放たれる。高藤君の横顔に真っ直ぐ飛んできたそれを、高藤君はふっと音も無く頭を後方にずらして避けた。そしてそのチョークは高藤君の隣で熱心に書類を見比べていた二年生の男の子のこめかみにクリーンヒットし、二年生は座っていた椅子から投げ出されるように横に倒れ、大きな音が静かだった生徒会室に響く。叫んだのは勿論高藤君ではなく被害者の二年生だ。
 しかしそんな惨状は丸無視して、初木君は続ける。
「バツ! 間違い! つーかなんだよその夢も希望の欠片も無いクソつまんない回答はぁ―――――――っ!!」
 プンプンという擬音が合いそうな怒り方で、両手に拳を作りファイティングポーズのような格好で高藤君を叱責する初木君。
そもそも生徒会のある理由に夢も希望もある回答があるというのだろうか、と高藤君も隣で起こった悲惨な事故など気にせずに思った。
「……少しは心配して下さいよ二人とも! つか何だよ夢も希望もある回答っていうのは!!」
 そう叫んだのは高藤君の隣でぶっ倒れさせられた二年生だ。よろよろと椅子に掴まって立ち上がりながら、高藤君の思っていたことを問う。
「あ。コタローちゃんいたの」
「いましたよさっきから!!」
 まるで今気付いたかのように言う初木君にまたもや叫び返すコタローと呼ばれた二年生。随分と頭に来ているよう。
「ごめんごめん、小さくて分かんなかった」
「てめぇふざけんな」
全くもって謝る気ゼロの初木君に青筋を立てながら、ドスの利いた声を発す二年生。しかし彼は高校男児にしてはどちらかというと小さく、顔も少年と女性を足して二で割ったような顔をしているため、怒ってもあまり怖くないのだ。
「……で、お前は結局生徒会は何の為に存在していると言うんだ?」
 放っておけばいつまでも続きそうな会話を止めるように口を挟む高藤君。これ以上やらせていても二年生が可哀想なだけだという良心的な判断による行動なのだ。……そもそも避けなければ良かったなどどいう考えは全くしないんだぞw
 初木君は後輩で遊ぶのを止めて、数秒タメた後に
 
 「―――――ぶっちゃけ、悪の手から学園を守る為に存在する秘密戦隊組織だと思う」

 至極真面目くさった顔で、そう言ったのだった。

http://bungeiclub.nomaki.jp/
design by {neut}