真崎珠亜

進め!セイトカインジャー!!

「でもま、これで倒さなければならない敵も決まったわけだし」
「結局PTAが敵なんですか!?」
「うん。しかもボスはセイトカインブラックのミッチー」
「いつの間に成海先輩がそんなポジションに!?」
「よーっし! そしたら必殺技とか決め台詞とか決めようぜーぃ。何か意見ある人ー」
 またもコタローと漫才のようなやりとりをして、初木は楽しげにそう言った。
ツッこみに関しては明らかに無視である。
「決め台詞…?」
ぽそりと疑問を零したのは高藤だ。
「そ、決め台詞。『●に代わってお仕置きよ♥』みたいな」
「なんか智人の言い方ヒワイ〜」
「そう聞こえるお前の頭が卑猥なんげふん…」
「と・も・ひ・と?」
「あいスイマセン……」
また同じように鉄拳で制裁され、初木の体は結構ボドボドになってしまっていた。それでも言い続けるのが初木という漢なのである。
「あ、でものぶやんの決め台詞は『知性の青』がっ!?」
「貴様そこまで俺の傷を抉りたいか…っ」
「うん抉りたゴメンナサイ…」
一発目で高藤に濡れ雑巾を顔面に当てられたにも拘わらず、笑顔で抉りたいなどと最悪なことを言おうとした初木は、高藤が第二投に用意した段ボールカッターを見て即座に謝罪した。…ちょっと涙目で。
「んだよー。そしたらのぶやんは『はじける磯の香り!』で良いね。決定」
「俺に拒否権という物は無いのか!?」
「うん、無い。それで俺は『煌めく白刃の舞い』!」
「素晴らしく出来に差があるような気がするのだが…?」
「気のせい気のせい。あとピンクは『咲き乱れる心花の誇り』で、グリ…常磐は『吹き抜ける優風の祈り』」
「なんかださぁ〜い…」
「だまらっしゃい」
ブーっ、と文句を言う海那に初木はぴしゃりとそう言って、更に続ける。
「で、ブラックが『泣き叫べ愚かな弱者共が!』」
「それどう考えても悪役の台詞ですよね!?」
「ブラックが敵のボスってことは周知の事実だから良いんだって」
「どんなコメディ設定なんだよ!!」
「そしてイエローは『溢れるカリーへの愛!!』」
「どこまでカレーを引っ張るんですか!!」
「『カレー』じゃないのー、『カリー』なのー」
「どっちでも良いわ!!」
「……貴様等漫才もそのくらいにしておけ」
 聞いている方が呆れてしまうような会話を続ける二人に、高藤が止めるように口を挟んだ。
「漫才じゃありません!」「漫才じゃないってー」
「あ、ちょっとハモった」
そしてそんな二人が微妙にハモったことにキャハハと笑って海那が楽しそうに言う。そしてもう仕事とか作業とかどうでも良い感じの雰囲気の中、一人黙々とキーボードを打ち続けていた小川が、ふと生徒会の顧問から渡された予定表を見て一旦固まり
「…あの、初木先輩…」
 と、少し言いにくそうに声を出した。

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