真崎珠亜

進め!セイトカインジャー!!

「……成海先輩は? 今日学校に来ているのは見たのだけれど……」
 と、口を開いたのは小川で、成海先輩というのは議長長のことである。
「そういやミッチーどしたん? のぶやん何か知ってる?」
「……俺が知るか」
「だってのぶやんとミッチー親友でしょ?」
「……唯の腐れ縁だ」
 冷たくそう言いながら、高藤は成海の行動を思い出す。彼のことだから多分さっさとバイトへ駆けだしたか、学校にいてもどこかの教室で眠っているか、最悪な場合どこかかはたまた学校で、毎日のように取っ替え引っ替えしている女に睦言でも吐いているのだろう。
「あの歩く猥褻物め…!」
静かに怒りの炎を出しながら、高藤はキーボードを打つ手に力を込める。叩かれるように打たれるキーボードが痛そうに悲鳴をあげた。
「のぶやーん、落ち着け落ち着け。怒るな怒るな」
「怒ってなどいない!!」
 バシンとキーボードを叩いてからそう叫ぶ高藤。ミッチーこと本名成海千潤なるみちひろは高藤とは幼稚園時代からの幼馴染みなのだが、成海だけがどんどん軟派になってしまいそれが頭の固い高藤には許せず、心配はしているのだがつい怒ってしまうのだ。
「あー……、すまない……」
自分がキーボードを叩いたときに出された音に、ビクリと小川が肩を震わせたのに気付いて、高藤は決まり悪そうに言った。そんな高藤に小川もニコリと苦笑のような笑みを返す。
「のぶやんコワーイ、レミ泣いちゃうよぉ」
「うーわー……、心にも無いこと言ってるよ」
「智人は黙って」
「ぐふっ!」
 可愛い子ぶった海那に冷めたように初木が言った瞬間、初木の鳩尾に海那の拳が炸裂した。ドゴッ、というあり得ない音を腹部から発して初木は倒れる。
「ちょっ、アンタ仮にも生徒会長に何してるんですか!」
「えーっ、レミじゃないもーん」
「どう考えたってアンタでしょうが!!」
「……コタローちゃん?」
「な、何ですか」
「死・に・た・い・の?」
「すみませんでした―――――――っ!」
ニッコリ笑ってそう言われて、コタローは青い顔をしながら即座に謝った。何せ笑顔の海那の背後から真っ黒いオーラのようなものが噴出しているのが最強に怖かった。
「後輩虐めるなよ麗美ぃ」
「虐めてなんかいないもんっ。コタローちゃんが怖がってるだけだもん」
 腹部を押さえてのっそりと起きあがった初木がブーブーと不満を言うが、海那はさして気にした様子もなくぷいとそっぽを向いて言う。

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