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場面は変わるが校舎裏。現在の香月と鈴嶺である。
「ほらここ。外壁が壊れてて穴空いてるでしょ？」
「本当だ……」
香月が指さしたのは茶色い外壁が一部壊れている部分。その壁は旧校舎の物なのだが、修理が面倒くさかったのか、板が一枚置かれて隠されていただけだった。なんとずぼらな。
「じゃ、ここから入るわよ」
と、さっさと行ってしまう香月。鈴嶺は置いて行かれないように慌ててついて行くのだった。
旧校舎は連絡通路で新校舎とも繋がっており、校舎内には警備システムも無い。玄関や、窓、または外から通ずるどこかのドアを使ってしまうと引っかかるのだが、穴までは流石に見抜けなかったようだ。
「意外とあっさり入っちゃったな……」
学校前で門前払いに遭い、即終了が鈴嶺の中の予定だったのだが、どうやら違ったようだ。
「私を誰だと思ってるのよ。下調べくらいしてるんだから」
フフンと誇らしげに言う香月。
違う、お前の作戦は『めいれいさせろ』じゃなくて『ガンガンいこうぜ』だろ！
と、心の中でツッコむ鈴嶺。
そして二人はそのまま校舎内を捜すことになったのだった。
またまた場面は変わって車内。
その年から、毎年クリスマスとイヴの間に香月は出ていくようになった。それを毎年見守るためにこっそり後を付いていくことが紗月の年課になったのだ。
怪しい人に連れて行かれたら大変だし。
と、周りから見れば自分が怪しい人だと言うことに気が付いていない。
しかし危険なのを承知で、幼い妹たちのやっていることを止めないのは香月がその行動をする理由を知っていたから。
巻き込まれる鈴嶺は可哀想だが、兄としては香月の気の済むまでやらせてあげたかったのだ。
「……そういやさ、依月」
そんなことを思い出しながら、隣でぼんやりと外を見ていた依月に声をかけた。いきなり声を掛けられた依月は驚いて窓の外から目を離し、
「何？」
と応えた。そんな依月に紗月は言葉を続ける。
「依月は香月が何を頼んだか知ってる？」
「……知らない。お姉ちゃんは訊いても教えてくれない」
「…………だろうね」
「……兄さんは知ってるの？」
「うん、まぁ。それがこんなことをする理由なんだし」
「……意味が分からない」
「香月に怒られるかもしれないけど、特別に依月に教えてあげるよ。実は―――――――」