――――――――――…負けた。
そして鈴嶺はその夜、窓を開けたまま床にぶっ倒れ、しかも寝ゲロを吐いた挙げ句失禁までし、更に39度も出るような風邪に見舞われて、最悪な日々を送ったのである。
これを鈴嶺は『魔の３日間』と名付け。二度と同じ目に遭うものかと誓ったのだった……。
しかも次の日の朝にはサンタ達は消えていた。
母親に尋ねたがそんな物は見ていないと言われ、結局鈴嶺の見た夢ということにさせられてしまったのだ。
そしてそれから数日後、見事輪廻の果てより復活を果たした鈴嶺は香月に訊きに行ったが、
「あ、うん。あれ私がやったの。だって作戦会議サボるんだもん」
……回答はあまりにもあっさりしたものだった。
「どうやってあんなの付けたんだよ。あといつ回収した！」
と訊くと
「ベランダから屋根に上って、屋根伝いにそっちの家に行って取り付けた。回収も同じ風にして、アンタがぶっ倒れたときに直ぐに取りに行った」
……その時にせめて窓を閉めるくらいの優しさは無かったのか。
と、言いたかったがそんなことを言える立場ではない。何せ風邪で生ける屍になっていた鈴嶺は今年の彼女の『作戦』を台無しにしたのだ。口答えをすればおそらく死刑。ここは何も言わぬが花、というやつである。
しかし香月はいとも簡単そうに言っているが彼らの部屋は二階にあり、家と家の間隔も１メートル近くある。
それを渡る危険を冒してまで鈴嶺に嫌がらせをするというその執念は凄まじいものだと思う。
そしてその時の夢を鈴嶺は今でも時たま見て、思いっ切りうなされる。そんじょそこらの心霊現象よりも恐ろしい、小学６年生の思い出である。
§・§・§
さて、話は現在に戻るが、小６時の苦い思ひ出を思い出し、身も心も冷め切った鈴嶺は寒さと恐怖に震えながらも香月の家に行く決心をしたのであった。