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12/22 14:47
From 更科香月
Sub (non title）
ごめんマックいく
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八文字だった。
しかも『行く』という文字が変換されていないあたり急いでいたのだろう。まぁ香月も女子高生だ、友達付き合いの一つや二つあるだろう。仕方ない、うん、仕方ない。
鈴嶺は怒らないように自分にそう言い聞かせる。こんな事で怒るほどもうガキじゃないんだ、少しは大人にならなきゃ。
……頭の中で何かが何本か切れるような音はしたが。
ここで携帯を床に叩きつけるような鈴嶺ではない、そんな勿体無いことはしない。しかし、この怒りのはけ口をどこにすればいいのだろうか。
「……どうしたの？」
携帯を見て黙り込む鈴嶺が心配になったのか、依月が声を掛けてきた。
「友達とマックだってさ」
「ありゃま、そりゃカワイソウに」
はぁっとため息を吐いて答えた鈴嶺に言ったのは紗月だった。紗月は鈴嶺に縋り付くことに飽きたのか、ばふばふと着物の裾を払いながら立ち上がる。
「まぁもうすぐ４時だし、帰ってくるでしょ。門限は破らない子だから」
更科家の門限はなんと４時である。鈴嶺はいつも香月が門限が早いとぼやいているのを聞く。平日はそれでも５時までなのだが、学校から帰ってくると４時過ぎなのでハッキリ言って遊んで帰るなんて出来ない。その為香月は帰宅部である。
「４時って早くないですか？」
「香月にもいつも言われてるよ。だけどここのところ変質者も多いし、暗くなるのが早いからね。夏場は６時くらいまで延ばしてあげようと思ってるけど」
「香月が喜びますよ」
「そうだねぇ……。あ、鈴嶺ちゃん暇だったらココア淹れてよ。僕と依月の２人分。自分の分も淹れたかったらどうぞ御勝手に」
「はいはい、分かりましたよ」
ここで反論しても無駄なことは長年の付き合いで分かっている。俺は使用人じゃないって、と思いつつも結局小間使いをしてしまう鈴嶺なのだ。
ほくほくと甘ったるい香りのする湯気を立てるマグカップが３つ出来上がると、流石に３ついっぺんには無理なので先に２人に渡すことに決めた。
「はい。出来ましたよ」
「ありがとー、相変わらず鈴嶺ちゃんは良い子だね」
「……どういたしまして」
先ず依月とは別な一人掛けソファに座る紗月に渡す。少し『良い子』の部分が強調されていたような気もするが敢えて無視。きっと気のせいだろう。
そしてココアを飲み始める紗月。着物姿でココアを啜る26歳の男……。何とも奇妙な組み合わせである。まぁ彼が甘党なので仕方ないとは思うが。
「はい、依月。ここに置いておくよ」
ことんと本を読みふけっている依月の前のテーブルにココアを置く。いきなりの出現に驚いたのか少しだけ目を見開き、またいつもの無表情に戻った。
「……ありがと」
「どういたしまして」
ニコリと笑みを浮かべて答える。依月は表情が変わるのがあまりにも微妙なのでなかなか気付けないが、鈴嶺はこれまた長年の付き合いで分かるようになっていた。依月が表情を変えてくれることを鈴嶺は嬉しく思っていた。
同じ兄妹なのに依月には腹を立てたことがない。自分より年下だからかも知れないが、この家族で一番の常識人だからだろう。
さて、自分も飲むか。と思いダイニングからマグカップを持って来たところに、
「ただいまー！ いやー、遅れてゴメンよ鈴嶺ー。あ、ココア私にくれるの？ ありがと鈴嶺やっさしーい！ 寒かったんだよねー。と、言うわけでイタダキマス」
思いっ切り鈴嶺の目の前にあるドアが開けられたかと思うと、香月が入ってきた。
危うくココアを零しそうになり必死でバランスをとっていた鈴嶺に一息でそう言うと、あっという間にココアは彼女の腹の中へと収められてしまった。